◆ IPv4ネットワークからIPv6ネットワークへの移行
IPv4からIPv6ネットワークへいきなり全てのシステムを切り替えるのは現実的ではなく、段階的な移行が
必要とされます。IPv6への移行に際して使用される代表的な技術は大きく3つあります。デュアルスタック、
トランスレータ、トンネリングです。これらの技術を実装することでIPv4とIPv6が併存することができます。
◆ IPv6移行技術 - デュアルスタック
デュアルスタックとは、単一の機器に、IPv4とIPv6の異なるプロトコルスタックを共存させる仕組みのこと。
Ciscoルータでは、1つのインターフェースにIPv4アドレスとIPv6アドレスの両方を設定することができます。
デュアルスタックのルータがパケットを受信した場合、データリンク層のヘッダにあるタイプフィールドの値
によって識別 (IPv4=0x800、IPv6=0x86DD) して、IPv4、IPv6のどちらのパケットでもルーティング可能。
デュアルスタックによるIPv6移行技術が最もシンプルで設計がしやすく、一般的に採用されている手法です。
◆ IPv6移行技術 - トランスレータ
トランスレータは「IPv4からIPv6への通信」または「IPv6からIPv4への通信」を実現するための技術。
このトランスレータの代表的な方式にはProxy方式、NAT-PT方式、TCP Relay方式の3つがあります。
トランスレータ方式 |
説明 |
Proxy |
IPv4のプロキシ同様に、アプリケーションごとに送信元の代理となり宛先へ通信する方式 |
NAT-PT |
プロトコル変換とアドレス変換を同時に行い、IPv4とIPv6間を相互に通信する方式 |
TCP Relay |
トランスレータがTCP/UDP通信を横取りし、代理となりトランスポート層のデータを取得し通信する方式 |
今回はNAT-PTを詳細に解説します。NATはIPv4アドレスのプライベートアドレスとグローバルアドレス変換
の際によく使用する技術ですが、NAT-PT(NAT-Protocol Translation)は、IPv4パケットをIPv6パケットに
プロトコル変換するのと同時に、IPv4アドレスをIPv6アドレスにアドレス変換する技術です。NAT-PTでは、
DNS-ALG(RFC2764)と組み合わせて使用します。※アプリ層のペイロード部分を変換できない問題点あり。
Ciscoルータで、IPv6プレフィックスをNAT-PTプレフィックスとして割り当てる場合は ipv6 nat prefix
コマンドを使用しますが、サポートされるプレフィックスの長さは「 /96 」だけとなります。次の通り
に設定することで、IPv6パケット内で一致した宛先プレフィックスは、NAT-PTによって変換されます。
(config)# ipv6 nat prefix 2001:0db8::/96
CiscoルータでNAT-PTを実装させるためには、その他に「IPv4 ⇔ IPv6マッピング」の設定が必要です。
なお、CiscoルータではNAT-PTの使用は推奨されていません。今後は NAT64 の使用を推奨しています。
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