◆ MSTPとは
MSTP( Multiple Spanning Tree Protocol )は、複数のVLANをインスタンスという単位で処理できる
機能がある IEEE802.1S で定義されているプロトコルです。インスタンスとは、ネットワークにおける
論理トポロジーのこと。PVST+ ではVLANごとに異なるSTPインスタンスを生成し、Rapid PVST+では
VLANごとに異なるRSTPインスタンスを生成してVLANごとにSTP計算が行われますが、MSTP は複数の
VLANを1つにまとめたインスタンスごとにSTP計算が行われるため、スイッチのCPU負荷を軽減できます。
比較項目 |
STP |
RSTP |
MSTP |
IEEE定義 |
IEEE802.1D |
IEEE802.1W |
IEEE802.1S |
Catalystのサポートモード |
PVST+ |
Rapid PVST+ |
MSTP |
CatalystのSTP計算の単位 |
VLANごと |
VLANごと |
複数VLANをまとめたインスタンスごと |
spanning-tree mode |
pvst |
rapid-pvst |
mst |
対象ネットワークの規模 |
小・中規模 |
小・中・大規模 |
大規模 |
以上の通りCiscoでサポートしているスパニングツリープロトコルは「PVST+」「Rapid PVST+」「MSTP」
の3種類となります。他メーカでサポートする「STP」や「RSTP」も含めた比較表は以下の通りとなります。
プロトコル |
標準化 |
収束 |
負荷分散 |
ツリーの数 |
STP |
IEEE802.1D |
低速 |
不可 |
1つ |
PVST+ |
Cisco独自 |
低速 |
可 |
VLANごとに1つ |
RSTP |
IEEE802.1W |
高速 |
不可 |
1つ |
Rapid PVST+ |
Cisco独自 |
高速 |
可 |
VLANごとに1つ |
MSTP |
IEEE802.1S |
高速 |
可 |
複数のVLANに1つ |
◆ STP(PVST+)と RSTP(Rapid PVST+)の動作
PVST+では、Per-VLAN でVLAN単位ごとにSTPが構築されて、下図のとおり最適に負荷分散されます。
ただし、PVST+の場合はVLANごとに1つのスパニングツリーインスタンスが保持されるため、下図では
論理トポロジーは2つだけなのに600の経路計算が必要となります。その結果、VLANごとにBPDUが送信
されることなり、ネットワーク上の全スイッチのCPUリソースが消費されます。Rapid PVST+ でも同じ。
◆ MSTP の動作
MSTPでは、「複数のVLANを1つのインスタンスにマッピングする」ことで、VLAN単位ごとではなくて、
インスタンスごとにSTP計算できるようになりました。下図では、1 〜 300のVLANを「インスタンス 1」
301 〜 600のVLANを「インスタンス 2」にマッピングした結果、論理トポロジーと同じ数の「2」だけの
経路計算だけでOKであり、ネットワーク上の全スイッチのCPUリソースの負荷が軽減されます。
MSTPは、RSTPに基づいたプロトコルであるため、MSTPを有効化するとRSTPの高速収束も有効になり、
正常時と障害時の動作はRSTP同様に高速です。MSTPの場合、STPやRSTPに比べて設定が難しくなります。
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