◆ スパニングツリープロトコルの動作 @ ルートブリッジの選出
スパニングツリーでは、スイッチネットワークのループ構成をツリー状にするために、ツリー状の中心となる
ルートブリッジを先ず始めに選出します。ルートブリッジにはブリッジIDが最も小さなスイッチが選ばれます。
先ず、スパニングツリーが有効なスイッチはBPDUを送信します。そのBPDUにはブリッジIDの情報が入って
います。各スイッチは、隣接スイッチから受信したBPDUのブリッジIDと自身のブリッジIDを比較し合います。
ブリッジIDを比較する際に、先ずブリッジプライオリティ値を比較して、この値が同じ場合にはMACアドレス
を比較します。従って下図の場合、ブリッジプライオリティ値が最も小さいSWAがルートブリッジとなります。
◆ スパニングツリープロトコルの動作 A ルートポート(RP)の選出
スパニングツリーではルートブリッジの選出後、ルートポートと呼ばれるポートを選出することになります。
ルートポートは、ルートブリッジに最も近いポートです。非ルートブリッジごとに1ポートがルートポートに
なります。何をもって最も近いかですが、それは「 ルートブリッジに至るパスコストが最も小さいこと 」を
指します。ルートブリッジに至るパスコストの合計値の事をルートパスコストと言います。下図を解説します。
ルートブリッジはパスコスト 0 でBPDUを送信します。非ルートブリッジのSWBとSWCのポート@では受信
したBPDUのパスコストに自身のコスト値 4 を加算するので、SWBとSWCのポート@のルートパスコストは
4 となります。次にSWBとSWCもBPDUを送信し合い、受信したBPDUのパスコストに自身のコスト値 19 を
加算するので、SWBとSWCのポートAのルートパスコストは 23 。ルートポートは非ルートブリッジごとに
1ポートずつ選出されるので、SWBではポート@がRPになります。そしてSWCではポート@がRPになります。
帯域幅 |
コスト値( IEEE改定後 ) |
コスト値(IEEE改定前) |
10Gbps |
2 |
1 |
1Gbps |
4 |
1 |
100Mbps |
19 |
10 |
10Mbps |
100 |
100 |
◆ スパニングツリープロトコルの動作 B 指定ポート(DP)の選出
スパニングツリーでは、ルートブリッジを選出して、ルートポートを選出した後は指定ポートを選出します。
指定ポートは各リンク(セグメント)でルートブリッジに最も近いポートです。以下は指定ポート選出ルール。
○ 各リンクごとに1ポートが指定ポートになります。
○ ルートブリッジの全てのポートは必ず指定ポートになります。
○ 指定ポートは「最も小さいルートパスコストのRPを持つスイッチ側のポート」が指定ポートになります。
下図では、SWA⇔SWB、SWA⇔SWC、SWB⇔SWCの3つのリンク(セグメント)があります。各リンク毎に
指定ポート(DP)が選出されます。ルートブリッジの全ポートはパスコストが 0 なので指定ポートになります。
次に、SWB ⇔ SWC間の指定ポート( DP )の選出ですが、各スイッチのRPのルートパスコストを見るので
SWBのルートパスコストは 4、SWCのルートパスコストは 4 であることから、ルートパスコストは同じです。
ルートパスコストが同じ場合には、送信元ブリッジIDの値を比較します。送信元ブリッジIDが最も小さい値の
ポートが指定ポートになります。SWBの方がブリッジID小さいことからそのポートAが指定ポートになります。
ちなみに、指定ポート(DP)を決定する際に、先ず各スイッチのルートパスコストの値を見るので、例えば
SWBのルートパスコストが 19 で、SWCのルートパスコストが 4 である場合、SWB ⇔ SWC間ではSWCの
Aポートが指定ポートになります。
◆ スパニングツリープロトコルの動作 C 非指定ポート(NDP)の選出
ルートポート、指定ポートにも選出されなかった残りのポートが非指定ポートになります。非指定ポートでは
データフレームが送受信されない(BPDUは受信する)ブロッキング状態になり、これでループを回避します。
◆ スパニングツリーの各ポートの役割
スパニングツリーではルートポート、指定ポート、非指定ポートの3種類あります。役割は以下の通りです。
ポートの種類 |
ステータス |
説明 ( STPでは常に小さい値が強い ) |
ルートポート |
Forwarding |
RP (Root Port)。非ルートブリッジごとに1ポート選出される、ルートブリッジに最も近いポート。
@ 各ポートのルートパスコスト A 送信元ブリッジID B 送信元ポートID、の順で比較。
|
指定ポート |
Forwarding |
DP (Designated Port)。各リンクごとに1ポート選出される、ルートブリッジに最も近いポート。
@ 各スイッチのRPのルートパスコスト A 送信元ブリッジID B 送信元ポートIDの順で比較。
|
非指定ポート |
Blocking |
NDP (Non Designated Port )。ルートポートと指定ポートに選出されなかったポート。これが
ブロッキングポートである。このポートはデータを送受信できない状態になりループを回避する。 |
どのようなL2接続構成であってもスパニングツリーの構成は、@ルートブリッジの選出、Aルートポートの選出
B指定ポートの選出、C非指定ポートの選出の順番で考えていきます。下図のスイッチでは、プライオリティ値
が小さいSWAがルートブリッジになります。次にルートポートの選出です。2つのリンクの帯域幅が同じなので
ルートパスコストは同じになります。そして、同じスイッチなので送信元ブリッジIDも同じになります。すると
次の選定基準の送信元ポートIDを見ます。送信元ポートIDはポートプライオリティ+ポート番号で構成されます。
先ずポートプライオリティ値を見ます。デフォルトで全ポートのプライオリティ値は128なので次にポート番号
を見ます。G0/1とG0/2とではG0/1の方が小さいです。従ってルートポートはG0/1となります。次に、SWAは
ルートブリッジなので全てのポートが指定ポートになります。そして、残りのポートが非指定ポートとなります。
色々な解説を行いましたが以下の3点を理解しておけばどのようなL2トポロジーでもSTP状態が分かります。
◆ STPツリーは「 ルートブリッジの選出 ⇒ ルートポートの選出 ⇒ 指定ポートの選出 ⇒ 非指定ポートの選出 」のフローで決定。
1、ルートブリッジは、ブリッジID( ブリッジプライオリティ + MACアドレス )が最も小さい値を持つスイッチが選出される。
2、ルートポートは、@各ポートのルートパスコスト A送信元ブリッジID B送信元ポートID の順で最も小さい値を持つポート。
3、指定ポートは、@各スイッチのRPのルートパスコスト A送信元ブリッジID B送信元ポートID の順で最も小さい値を持つポート。
ルートポートは最上位のBPDUを受信するポート、指定ポートは最上位のBPDUを送信するポートとなります。
この「最上位のBPDU」は「最良のBPDU」とも呼ばれています。英語における「 best BPDU 」と翻訳です。
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