◆ IEEE802.11フレームフォーマット - 概要
先ず、Ethernetフレーム(DIX規格)のフォーマットを見てみます。Ethernetフレームの先頭に付加される
「プリアンブル」とはEthernetの送受信においてフレームの始まりを合図するための特別なビット列であり
プリアンブルはフレーム長として含めずに考えるのでEthernetフレームサイズは 64〜1518byteとなります。
次に、無線LANフレームのフォーマットを見ます。IEEE802.11フレームの場合、IEEE802.11 a/b/g の
いずれにおいてもPLCPプリアンブル、PLCPヘッダ、PSDUの3つで構成されます。詳細は以下の通りです。
IEEE802.11フレーム - 3つの構成要素 |
PLCPプリアンブル |
IEEE802.11フレームの先頭に付加される同期信号のビット列。この情報は物理層で付加される。 |
PLCPヘッダ |
変調方式(伝送速度)、データ長などの情報があるヘッダ。この情報は物理層で付加される。 |
PSDU |
IEEE802.11ヘッダと実際のデータから構成される情報。この情報はデータリンク層で付加される。 |
◆ IEEE802.11フレームフォーマット - 物理ヘッダの例 - 802.11b
物理ヘッダを、例えばIEEE802.11bのものとしたWLANのフレームフォーマットを詳細に見ていきます。
802.11bの場合、PLCPプリアンブルにはロングプリアンブル(18byte)とショートプリアンブル(9byte)の
2種類があります。ロングプリアンブルの場合は、物理ヘッダ(PLCPプリアンブル ・ PLCPヘッダ)は常に
1Mbpsで伝送されます。ショートプリアンブルでは物理ヘッダ(PLCPプリアンブル ・ PLCPヘッダ)は常に
2Mbpsで伝送されます。無線LANの伝送速度がどのような値でも、物理ヘッダはこの速度で伝送されます。
IEEE802.11bにおける2種類のプリアンブル |
ロングプリアンブル |
18 byte ( 144bit ) |
11bでは、PLCPプリアンブル、PLCPヘッダは常に1Mbpsで伝送される。 |
ショートプリアンブル |
9 byte ( 72bit ) |
11bでは、PLCPプリアンブル、PLCPヘッダは常に2Mbpsで伝送される。 |
IEEE802.11では、送信側「例:WLAN端末」がどの値の伝送速度でデータが送られてきたのかを、受信側
「例:アクセスポイント」が知るための規定があり、伝送速度の情報があるPLCPヘッダ(物理ヘッダ)を
最も遅い伝送速度で送るようにしています。この規定により受信側は常に低速で物理ヘッダを受信します。
PLCPヘッダに書かれた伝送速度が分かれば、その伝送速度でMACフレームは受け取られるようになります。
◆ IEEE802.11フレームフォーマット - IEEE802.11ヘッダ
次に、IEEE802.11フレームの中の「IEEE802.11ヘッダ」の詳細を見ていきます。Ethernetフレームでは
宛先アドレス、送信元アドレス、タイプの3項目だけでしたが無線LANでは7項目もフィールドがあります。
IEEE802.11ヘッダ (MACヘッダ) のフィールド |
Frame Control |
フレームの種類、フレームの宛先、送信元が無線か有線かどうか、フラグメント情報、電力管理、
WEPの使用の有無などの情報を含む。フレームの種類は次の通り。APが発信するビーコン等の
管理フレーム(00)、Ackフレームなどの制御フレーム(01)、データの送信を示すデータフレーム(10) |
Duration/ID |
RTS/CTSなどで使用するフィールド。電波を使用する予定期間(フレーム送信に必要な時間)の情報。 |
Address 1 |
宛先のMACアドレス、送信元のMACアドレス、アクセスポイントのMACアドレス(BSSID)などの情報。 |
Address 2 |
宛先のMACアドレス、送信元のMACアドレス、アクセスポイントのMACアドレス(BSSID)などの情報。 |
Address 3 |
宛先のMACアドレス、送信元のMACアドレス、アクセスポイントのMACアドレス(BSSID)などの情報。 |
Sequence Control |
送信するデータのシーケンス番号、またはフラグメント化した場合のフラグメント番号の情報 |
Address 4 |
宛先のMACアドレス、送信元のMACアドレス、アクセスポイントのMACアドレス(BSSID) などの情報。
※ ビーコンなどの管理フレームである場合、このフィールドに SSIDの情報 (実際の文字列) がある。
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※ 制御フレーム(01)としてはRTS、CTS、Ack、PS-Pollの4種類のフォーマットがあります。管理フレーム(00)としては、例えば
ビーコン、プローブリクエスト、プローブレスポンス、アソシエーションリクエスト、アソシエーションレスポンスなどがあります。
Address 1/2/3/4 のフィールドのアドレス情報については、以下の通りネットワーク構成により変化します。
Aの場合、送信元のPCはEthernetフレームを送信してくるので、宛先アドレスと送信元アドレスの情報
しか指定していません。これをAPでヘッダーを書き換えて、上図のAddress 1/2/3 の情報に変更します。
Bの場合、送信元のPCはIEEE802.11フレームを送信してきます。APはこのIEEE802.11フレームを宛先
と送信元アドレスの情報だけのEthernetフレームのフォーマットに変更して有線LANの宛先に転送します。
Cの場合、送信元のPCはEthernetフレームを送信してくるのでこれを上図のようなIEEE802.11フレーム
に変更して転送します。そのフレームを受信したAPはEthernetフレームのフォーマットに変更して有線へ。
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